目次
図表一覧
はじめに
第1章 給食費未納問題
1 義務教育を受けるための費用
2 学校給食費の未納状況
3 学校が認識する主な原因
4 保護者の経済的な問題と制度の認知状況
5 保護者としての責任感や規範意識
第2章 就学援助の現状
1 援助を受ける子どもの増加
2 就業環境の変化とひとり親家庭の増加が二大要因
3 母子世帯と他の世帯の所得分布
4 母子家庭の増加とDV
5 就学援助制度の内容
6 生活保護と就学援助の関係
7 就学援助の周知状況
第3章 就学援助運用の自治体格差
1 国庫補助廃止による就学援助の抑制
2 就学援助費の推移
3 自治体の財政力と就学援助
4 自治体の人口規模と運用の差
5 就学援助と生活保護の運用
6 就学への支援におけるナショナル・ミニマム
第4章 現物給付としての学校給食の意義
1 学校給食の歩み
2 公立中学校における給食実施状況
3 完全給食のない公立中学校における問題点
4 子どもの食のセーフティネット
5 現物給付の必要性
第5章 高校版就学援助の必要性――卒業クライシス問題
1 学費滞納と卒業
2 経済的理由による高校中退の現状
3 東京に暮らす若者の学歴別就業状況
4 高校授業料無償化法の成立
5 高校卒業までの学習条件整備の必要性
6 長期欠席の状況
7 高まる高校版就学援助の必要性
第6章 母子家庭の母にとってのパートタイム労働
1 母子家庭の母の職種と年間収入
2 パートタイム労働者の増加・基幹化
3 パートタイム労働者の社会保険加入状況
4 パートタイム労働者への社会保険適用問題の経緯
5 不安定就労の増加に対応した制度の必要性
6 厚生年金の「空洞化」と第3号被保険者制度
7 均等待遇の必要性
8 世論調査の結果とパートタイム労働者の意識
9 母子家庭の母にとってのパートタイム労働
補論1 パートタイム労働者の第3号被保険者問題と労働市場の中立性
補論2 厚生年金適用拡大の経済的影響と今後の課題
第7章 災害と子どもの貧困――災害時における子どもへの支援
1 避難の状況
2 母子避難者の要望
3 災害救助法上の子どもの扱い
4 乳幼児・子どもの居住環境のモニタリング
5 子ども・乳幼児の避難支援とコミュニティの維持
6 母子避難者の生活への支援
7 災害と子どもへの支援
第8章 子どもの貧困削減のための政策を考える
1 子どもの権利条約の理念の実現
2 子どものための給付のあり方
3 シビル・ミニマムの確保
4 排除なく、すべての子どもに高校卒業を
5 ニーズに合った適切な情報提供
6 関係者間の連携、情報の共有
7 子どもの貧困削減のための政策に向けて
第9章 議員立法による弱者の人権の確立――子どもの貧困対策法
1 議員立法による子どもの貧困対策法の成立
2 近年における議員立法の状況
3 成立する議員立法の条件
4 議員立法の意義
5 議員立法の課題
6 議員立法を支える人材
補論 DV防止法における議員立法の特質
付録1 子どもの貧困対策の推進に関する法律と与党案(衆第二〇号)・野党案(衆第一九号)との比較
付録2 子ども・子育て関連三法案の国会審議における意見陳述、質疑および資料
付録3 子どもの権利条約(日本ユニセフ協会訳)
参考文献
解説
あとがき
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書では、先進国である我が国の子どもの貧困・格差の問題について、就学援助制度、母子家庭の現状、学校給食の役割に焦点を当てて論じたい。まず第1章で義務教育を受けるための費用の中で大きな部分を占める給食費未納の実態と原因を踏まえつつ、子どもの貧困におけるセーフティネットとして、生活保護制度と比べて実態があまり知られていない就学援助制度を中心に、子どもの貧困削減のための政策を考えたい。
第2章では就学援助の現状について、
第3章ではその運用の自治体格差について、
第4章では現物給付である学校給食の意義について、
第5章では高校中退の現状を踏まえ高校版就学援助の必要性について述べる。
母子世帯の貧困には、パートタイマーのような非正規労働者の社会保障・セーフティネットの問題が大きくかかわっている。第6章では、二人に一人の子どもが貧困状態である我が国の母子家庭に関し、パートタイム労働と年金等社会保険制度の適用の問題について述べている。
第7章では、災害時の子どもへの支援について述べる。「災害は貧困を襲う」と言うように、災害からの避難・日常生活の回復には大きな格差がみられる。
第8章では、前章までを踏まえ、子どもの貧困削減のための政策をまとめる。
第9章では、市民団体からの要望をもとに二〇一三年六月に成立した「子どもの貧困対策推進法」について、筆者が国会職員であった当時にかかわったDV防止法改正の経験から、議員立法によって弱者の人権の確立をめざす場合の意義と課題を整理している。
この本を手に取られた読者の皆様は、どこからでも関心のあるところから読み始めていただければ幸いである。
二〇一三年七月 鳫咲子