目次
はじめに
第1部 結婚のリスクと夫妻関係のリスク
第1章 女性にとっての結婚の意味とは
1.「結婚」情報におけるジェンダー格差
2.女性を取り巻く結婚の意味づけを探る
3.リスクとしての結婚と離婚
●コラム「大勢の愛 ひとり親の強み」
第2章 現代における夫妻関係の特徴――生成と解体
1.現行の婚姻制度
2.夫妻関係の現代的特徴
3.夫妻間コンフリクト
4.現代の夫妻関係と夫妻間コンフリクト
5.夫妻間コンフリクトと夫妻間の病理への対処法
●コラム「親離婚の子ども 相談できる場を」
第3章 家族と暴力――ドメスティック・バイオレンス生成過程とコントロール
1 DVに関する疑問
2 DVとは?
3 なぜDVが発生するのか?
4 DVの終焉は可能か?
●コラム「DVからの自立 時間かけて」
第4章 夫のもとから家出した妻たち
1.問題の所在
2.分析対象
3.妻であることの極限的な緊張状況
4.「夫による離別阻止型」(Aタイプ)の事例分析
5.「資源欠如の離別困難型」(Bタイプ)の事例分析
6.「夫による継続阻止型」(Cタイプ)の事例分析
7.「資源欠如の維持困難型」(Dタイプ)の事例分析
8.〈夫妻システムの緊張処理過程〉モデル
●コラム「つらい経験 糧に咲く花」
第2部 ひとり親家族の現状と課題
第5章 ひとり親家族になるということ
1.ひとり親家族の現在
2.離婚とひとり親家族
3.ひとり親家族の生活分析
4.ひとり親家族であるということ
●コラム「子育て支援は 親の応援とセットで」
第6章 ドメスティック・バイオレンスから離婚した母と子の今
1.DV離婚の後の問題
2.DVにさらされる子どもたちに関する既存研究
3.DVから離婚した母子の事例
4.DV、離婚の子どもへの影響
5.DVから離婚した母と子への支援
●コラム「DVで離婚の母子に 多くの支え必要」
第7章 母子家族の現状と社会的排除
1.母子家族とシングルマザーの現状
2.母子家族の多くが貧困となるわけ
3.社会的排除問題としてひとり親家族をとらえるとは?
4.ひとり親家族の社会的包摂に向けて
●コラム「母子家庭頑張らせる 冷ややかなまなざし」
第8章 ひとり親家族の自立支援と女性の雇用問題
1.ひとり親家族施策――給付から自立支援へ
2.ひとり親家族の自立とは?
3.ひとり親家族の経済的自立条件
4.ひとり親家族に必要な自立支援策とは?
●コラム「仕事、住、保育 “三位一体”を」
第9章 “要支援”母子家族の自立条件――ある母子寮在寮家族の生活システム分析
1.母子家族の生活システム分析の意義
2.母子家族の自立条件
3.ある母子寮の要支援母子家族の問題状況
4.母子生活支援施設の現状と母子家族支援の今後の課題
●コラム「離婚後の家族 子は親の支えに」
第10章 ひとり親家族と子どもたち
1.ひとり親家族支援における「子どもの視点」
2.ひとり親家族の生活実態と保護者の悩み
3.ひとり親家族で育つ子どもたち
4.ひとり親家族と階層
5.子ども支援の必要性
●コラム「母子家族の受験 経済不安免れず」
文献と資料
初出一覧
おわりに
前書きなど
おわりに
5年ほど前から、ひとり親家族に関する研究を、1冊の本にまとめてみたいという願いを抱いてきました。ひとり親家族を支援する人びとが、目の前のひとり親家族のケースワークをするにあたって、その前提としてのケース・スタディに役立つようなテキストが必要であると考えたからです。子づれシングルを支援するテキストや子づれシングルが参考にできる実用書は何冊か出版されています。しかし、子づれシングルを支援する人びとの指針となるようなテキスト、それも、あまり専門的すぎず、それでいてマニュアル的な指針ではなく、目の前のひとり親家族の生活実態をトータルにとらえ、問題の所在を明らかにするうえで参考になるテキストということになると、ほとんどみあたらないからです。
これまで、大阪府、大阪市、貝塚市などにおいて、ひとり親家族への自立支援施策についての審議に関わらせていただくなかで、また、ひとり親家族を支援する人びとの研修において講師をさせていただくなかで、まず何よりも、「わが国の子づれシングルと子どもたちが営む家族が、どのような生活困難に直面しているのか、なぜさまざまな生活困難な事態を解決できないでいるのか」ということを、当事者の視点に立って理解していただくことが重要であると考えるようになりました。
そこで、ひとり親家族の生活をトータルにとらえたテキストをまとめたいという強い思いから、これまで、発表させていただいた論文を再点検することにしました。驚いたことに、夫の暴力から命からがら逃れて保護される女性たちの深刻な現状や、母子寮から母子生活支援施設へと施設の名称は変わっても、そこに入所している母子家族の現状は、20数年前とさほど変わっていないということに愕然とする思いがしました。また、ひとり親家族の生活実態もひとり親家族支援策も、10数年前と比べて改善されたとはとうてい言えないことも再確認することになりました。
それにしても、なぜ、ひとり親家族の生活実態も福祉施策も改善されていないのでしょうか。その一端は、私たち研究者の怠慢にあったと言わざるをえません。いったい、この20年間、何をしてきたのか? と、責められても仕方がありません。
一研究者として自省するとともに、何ができるかと考えるなかで、ささやかながら、研究者としての責任を果たす意味で、また、これからの自らの使命を明確にする意味でも、本書を刊行することによって、子づれシングルの支援者たちに役立てていただき、そして、子づれシングルの生活改善につなげていただきたいとの考えに至ったのです。
(…後略…)